2013/12/17

■コラム■ホンダ・オッデセイが、14センチ車高が上がった件

2013年10月31日 ホンダは新型オデッセイを発表した。それと同日にエリシオンの販売終了もひっそりと発表されている。しかしながら中国のみで販売は継続される。話をオデッセイに戻すと本モデルで5代目となり、車高が14センチ高くなり、後席のヒンジドアを止め、スライドドアに替えた。なぜそうなったかについては各方面に多数の記事があるので、そちらをご参照いただきたい。

同車は日本におけるミニバンブームの火付け役となり、3代目からは低車高と走行性能をアピールし、走りのホンダを全面に主張してきた。しかしながら5代目からはその主張をあっさり撤回してしまった。日本の市場は非常に複雑と言われているが、その通りだろう。

上海で、あるトヨタの中国販売管理の関係者と酒を飲みながら本件について話した事がある。トヨタではミニバンの(日本の)ラインナップは3段構成で、どれも顧客が被らない設定だ。しかも姉妹車やハイブリッド設定まで含めると多数の選択肢が顧客に用意されている。車業界でトヨタはマーケティングが巧みで、常に売れる車(商品)優先というのは周知の事実である。

「今回のオデッセイの方向転換は、市場動向の見誤りからの軌道修正です」 しかしトヨタの彼はこうも言っていた。「ホンダのチャレンジン精神は羨ましい」とも。26年前に発表されたホンダ・シビックには、当時のトヨタ高級車のみに採用されたサスペンション形式が搭載されたのはとても衝撃的だった、と。

26年前と言えば日本ではバブル景気がちらほらと現れ始めた時期でもある。そのバブル景気は収束したものの、今ほどは悲壮感がない94年に初代オデッセイが発表され、爆発的なブームを築いたのである。ホンダはその勢いを駆ってさらなる独自性をアピールしたものの、昔ほど勢いのない今の日本ではニッチな存在になったのは否めない。

つまり、技術的に非常に優れたモノ(商品)であっても、供給側(作り手)と、需要側(ユーザー)の思いがマッチングしなければ、ビジネスでは成功できないという単純な例だろう。勿論、自動車という大きな商品は、供給・需要双方からみても非常に複雑な市場。

話を中国に戻すと、世界の自動車メーカーが中国に籍を置き、ドイツ・フォルクスワーゲン社においては中国で圧倒的なシェアを確保し、連結決算下にはないものの、かなりのウエイトを占めている。事実、街行く車を見渡しても日本車より圧倒的に多い。ドイツ本社では「中国偏重を改めた方がよいのでは?」という意見も出ているくらいである。

かつての日本車は1970年代、アメリカで徐々に認知され貿易摩擦を生じさせたのはあまりにも有名ですが、ここ中国ではそれは感じられない。(2012年の尖閣問題時のデモの攻撃対象にはなってしまったが…)自動車に限った事ではありませんが、「日本の商品」という神通力はかつてほどの勢いは、今の中国にはない。つまり、日本の企業にブランドストーリー(訴求効果)が、欧米企業に比べて少ないのである。勿論、それだけではないが、続きは次号にて。

(131217 上海の街角から/伊藤一也)

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